テレビCMの効果計測をどのように考えるか?
TVCMは効果測定の精度が上がっているため、費用対効果の高い広告媒体になっています。テレビの視聴率は性別や年齢、地域までデータが細分化されるようになりました。TVCMを放送した地域と放送していない地域のサービスや商品の売り上げを比較すれば効果を測定できます。また、TVCMからホームページやオウンドメディアへの流入は、TVCMの放送前後で訪問者数や検索数が、どのくらい変化したかを調べれば可視化できます。複数のデータから、TVCMを放送することでどのように効果があったかを測定できるのです。
TVCMを放送した時間帯の視聴率が高いだけでは、効果を正確に測定することはできませんでした。視聴率はテレビが映っていればカウントされます。そのため、トイレに行ったり、スマートフォンを見ていたりしてテレビを見ていない場合もあります。また、TVCMを見たとしても、それがサービスや商品の購入につながったかどうかは分かりませんでした。しかしインターネットの普及で、消費者はネットでサービスや商品を調べ、口コミなどを見て購入の判断をするようになっています。
TVCMが消費者の購買意欲を刺激できていれば、企業のホームページを見るか、商品やサービスを検索するでしょう。インターネットの数値の変動は調べやすく、用いればTVCMの効果測定は容易になり、費用対効果を高められるのです。TVCMの効果の計測に有用なデータは以下のものがあります。
精度の高い視聴率「GRP」と「GAP」
視聴率には2つあり、それぞれの精度が高くなったため、サービスや商品のターゲット層を狙いやすくなりました。
GRP
「GRP(Gross Rating Point)」は、ある時間に放送したTVCMの世帯視聴率を合算したものでしたが、2020年4月以降は個人視聴率を合算した数値になりました。個人視聴率は、年齢や性別ごとの視聴率がわかるため、企業が狙うターゲット層に訴求できます。たとえば、視聴率20%の番組にTVCMを10本流せば、20×10=200GRPになります。TVCMを流したのが平日3日なら、200GRP×3=600GRPです。
GAP
「GAP(Gross Attention Point)」は、テレビを注視している時間を数値化したものです。測定にはセンサーカメラが使用され、トイレに行ったり、スマートフォンを見ていたりするとカウントされません。TVCMが流れただけではGAPには含まれないので、精度の高いTVCMの視聴率を知ることができます。視聴者がテレビ画面を1秒注視すると1GAPです
サイトの閲覧数やキーワードのクリック率
ホームページやオウンドメディアの閲覧数や、サービスや商品に関するキーワードのクリック率の変化は、TVCMがどのくらい消費者の興味を引いたかを可視化できます。
MMMによる効果測定
「MMM」は、「マーケティング・ミックス・モデリング」の略語です。「MMM」は複数のマーケティングが、結果にどのように影響し合っているかをデータ分析から可視化する手法です。たとえば前の項の、TVCMとホームページの訪問者数の関係です。TVCMを見た後の視聴者の行動を知ることは難しいですが、他のマーケティングに与えた影響から探ることができます。そのほかにも、競合企業の広告や天候による数値の変動も「MMM」の必要なデータになります。TVCMにおける「MMM」の手順は以下のとおりです。
収集するデータの洗い出し
収集するのは、サービスや商品に関係するデータです。サービスや商品を利用する性別や年齢層、季節や天候によって売り上げが変動する場合はそのデータが「MMM」に必要になります。都道府県によって売り上げや購買層に違いがあるなら、そのデータも収集対象になります。このように、サービスや商品に影響を与える要素を洗い出しましょう。
データ収集
データはTVCMを放送する前に収集します。データの種類が多く、収集期間が長い方が精度の高いTVCMの効果測定が可能です。そのため、マーケティングの対象となるエリアを、できる限り細分化したデータを収集します。全国をマーケティングの対象にしているなら、都道府県ごとの売り上げや、季節と気候による変動。地域を対象にしている場合には、地区ごとのデータです。競合企業がTVCMやキャンペーンを打ち出した際の影響をデータとして抽出しておきます。これらのデータをTVCMを放送する前に収集しておき、放送後にどのような変化があったかを集計しましょう。
データから分析
収集したデータを分析し、仮説を立てます。ホームページやオウンドメディアの訪問者がTVCMの放送前後で増えたなら、その時の季節や天候などはどうだったか。TVCMを放送しても数値に変動がない場合にも、データを分析し、分析結果から仮説を立てましょう。仮説からTVCMの運用方針を決めます。TVCMの放送期間が長く、放送時間帯が多い方が仮説の精度が高くなります。
繰り返し、精度を高める
PDCAサイクルは「MMM」の精度を高めます。Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)を繰り返し、原因と結果の関係性を検証しましょう。
■mmmについて知りたい方はこちら
テレビCMの効果測定のために押さえておきたいポイント
TVCMの効果を測定するために押さえておきたいポイントは4つです。そのうち3つのポイントは、TVCMを放送する前のデータが必要になります。すでにTVCMを放送しており、放送していない時期のデータが少ない場合は、効果測定の精度が下がる可能性があります。そのような場合は効果測定の精度を下げないために、ほかのデータをより細分化しましょう。たとえば、ホームページの訪問者数の変動なら、曜日や時間帯ごとにデータを取ります。
サービスや商品が売れた時に雨が降っていた場合は、降雨量や降雨時間など、細かいデータを取り効果測定の精度を保ちましょう。TVCMの効果を測定する際に押さえておきたい4つのポイントは以下のとおりです。
TVCM放送前のホームページやオウンドメディアの閲覧数
ホームページやオウンドメディアの閲覧数は、TVCM放送前のデータがあった方が良いでしょう。訪問者がサービスや商品の購入にまで至ったコンバージョン率、関連するキーワードの検索数などデータが細分化されているほど、TVCM放送の効果測定の精度が高くなります。
地域ごとの売り上げデータ
マーケティングの対象としている地域の顧客数や売り上げなどのデータを用意します。データはTVCM放送前のものが良いでしょう。TVCMの反響が少ない地域は放送を抑え、反響の多い地域の放送頻度を高くするなどの方法を検討しましょう。
季節や天候による数値の変動
季節や天候によって、サイトの訪問者数や売り上げにどのくらい影響があったかをデータ化します。数値に変動があった時の、気温や湿度、雨や雪の有無と量のデータが必要です。季節によってTVCMの効果が低くなる場合は、その季節の放送回数を少なくし、効果がある季節に注力すれば費用対効果が高くなります。
自社のサービスや商品の購買層
自社のサービスや商品の購買層を把握しましょう。TVCMの放送を始めていても、データの収集には影響しません。視聴者の性別や年齢などが分かる個人視聴率が手に入るので、ユーザーの性別や年代を把握しておくことで、より効果の見込める時間帯にTVCMの放送を絞れます。視聴者層と購買層をマッチングできるので、TVCMの効果測定の精度を高められるでしょう。
【まとめ】データの収集が容易になり、TVCMの広告効果を高めやすくなった
視聴率が細分化され、オンライン上では閲覧者数やクリック率のデータが容易に手に入ります。それらのデータは「MMM」の材料になり、TVCMの効果測定の精度を高められるようになりました。視聴者の見た後の行動がわからなかったTVCMは、オンラインへの流入で可視化できるようになり、費用対効果の高いマーケティングになっています。